ESGと不動産
今月号の『ARES 不動産証券化ジャーナル』を見ていて、ESGに関して面白いトピックがあったので、私の意見とともに共有したい。
今回はESGとREIT・不動産の関係性について述べていく。
ESGは不動産に影響を及ぼす??
ESGは不動産に影響を及ぼすかと問われれば、その答えはYesであろう。
ここ最近ESGが急に騒がれ始め、「意識高い投資家の戯言...」などと揶揄されることもあるのを見かける。
しかし、REIT市場に限ってみると、欧米の投資家を中心に環境に配慮した運用ができているのか非常に注目している。
各REITはそれをアピールするかのように直近の決算資料の末尾には必ずと言っていいほどESGに対する取り組みのページを設けている。
欧米ではダイインベストメントの動きも活発であり、環境に悪影響を及ぼす事業を行う会社を即投資対象から外す動きも広がっているため、ESGを無視することはもはやご法度となっている。
こと不動産についても、人々との生活に密着するセクターであるため、ESGがより重視されるセクターといっても過言ではないと思う。
ESGは不動産価格に影響を及ぼすか??
さぁ、ここでESGが直接不動産価格に影響を及ぼすか考えて行きたいと思うが、『ARES 不動産証券化ジャーナル(May-June)Vol.61 』のケンブリッジ大のフランツ教授と東大の清水教授の対談が非常に参考となった。
フランツ教授は不動産投資価値を算出する上で、環境配慮要素も変数として不動産価値に影響を及ぼすことを指摘している。
(参考)Green Premium in Green Propety
※ARES 不動産証券化ジャーナル(May-June)Vol.61 p.17 より
上の数式は一般的な不動産価値を求めるのに使われる「不動産価格= NOI(賃料収入)÷利回り」を変形したものである。
環境に配慮するグリーンビルディングとなることで、賃料収入が上昇しNOIが高くなり不動産価格が上がるというのが、ESGが不動産価格を上昇につながるメカニズムとなるとのことだ。
ただ、フランツ教授は年収が700万円以上にならないと、いわゆるグリーンプレミアムはなくなり、環境に配慮しても不動産価格は上がらないという制約が付くことも発見している。
最後に、フランツ教授・清水教授ともに不動産は半世紀以上続くアセットであるために、ESGを不動産に導入することは総合的に不動産価値を上げると結論づけている。
今後も「ESGと不動産・REIT」についての研究は始まったばかりなので逐次取り上げていきたい。