タヌキれぽーと✍️

投資家タヌキによる資産運用に関するブログです。株式投資、キャリア、REIT、不動産。

REIT研究最前線

f:id:investor_tanuki:20210630073104j:image

今回はREITに関わる研究について、現在どのような研究が行われているのか紹介していきたい。

 

本ブログの執筆にあたっては、関西学院大学の児島幸治教授の『米国におけるREIT(不動産投資信託)の最近の動向』(2015)を参考にさせていただいた。

 

 

 

 

はじめに

 

REITの学術研究については、株と債券に比べると誕生が遅かったこともあり現在は発展段階にある。

 

一方で、REIT誕生国のアメリカを中心にREITの学術研究は急スピードで成長している。

 

『米国におけるREIT(不動産投資信託)の最近の動向』(2015)では2015年までのアメリカにおけるREIT研究のサマリを作ったものであり、本論文をもとに現在REITに関して、どのような研究が行われているのかを紹介していきたい。

 

本論文では、下記6つ分類のREIT研究がなされていると示された。

 

  1. REIT価格・投資リターン
  2. REIT価格と実物不動産及び他の金融商品との関連研究
  3. エージェンシー問題企業統治・経営者報酬
  4. ディスクロージャー、会計数値とCF数値、利益調整
  5. IPOSEO、自社株買い、株式分割、非上場化、M&A
  6. 金融政策・経済状況への影響

 

大まかに分類すると

1~2がテクニカル研究、3~5がコーポレートファイナンス研究、6がマクロ経済研究

になるであろう。

 

その3大分類について説明していく。

 

 

テクニカル研究

テクニカル研究については一言で表せば、REIT投資口価格の形成要因に関する研究である。

 

REITの価格形成については、機関投資家保有比率や流動性、実物不動産、そして他の金融商品など様々なものに影響される。

 

そのREITの価格変動要因について、統計モデルを用いて明らかにしようとするのがテクニカル研究である。

 

REITテクニカル研究によって実証された事例は以下のようなものがある。

 

  • 配当利回り構造を分解することでREIT価格のインフレに対するヘッジ効果の存在を検証
  • REITのリターンは不動産からの賃料収入を反映しているが、不動産の値上がりからの利益を反映していない。
  • REIT市場における群衆効果の存在が明らかとなり、リターンの変動性が高い時に群衆効果がより顕著であることを明らかにした。(※群衆効果・・・人間が周りのものと同じ行動をとってしまうこと。)

etc...

 

 

コーポレートファイナンス研究

続いて、REITコーポレートファイナンスに関わる研究の説明をする。

 

コーポレートファイナンス・・・企業価値を最大化することを目的として行う企業の財務活動

 

REITコーポレートファイナンスに関連する分野では、エージェンシー問題、経営者報酬、ディスクロージャー、会計数値とCF数値、IPOM&Aなどが挙げられる。

 

昨今のJ-REIT市場では利益相反取引と思われるような物件売買があったり、敵対的買収を仕掛けられるようなREITも出てきたため、コーポレートファイナンスの分野が最もホットなREIT研究の分野といっても過言ではない。

 

REITコーポレートファイナンス研究によって実証された事例は以下のようなものがある。

 

  • REITの配当を恣意的な部分と恣意的でない部分に分ける新しい手法を取り入れ、恣意的な配当の割合の大きさ、資本市場の状況とREIT毎のバラツキを明らかにした。
  • レバレッジと負債の期限を同時方程式アプローチで推定し、自己防衛的なCEOのレバレッジが低く、短期負債を用いる。
  • REIT株価と利益調整行動の関係を分析し、株価の変動性が、利益調整のインセンティブに与える影響を明らかにした

etc...

 

 

マクロ経済研究

最後にREITのマクロ経済研究については、REITが金融政策や経済状況というマクロの変動要因に対してどのように影響されるかを分析するものである。

 

特に、近年では金融緩和が実施され不動産市場に多大なる影響を与えているため、重要な研究である

 

REITコーポレートファイナンス研究によって実証された事例は以下のようなものがある。

  • 金融政策のREITリターンへの非対称的な影響をマルコフモデルを用いて検証。好景気と不景気時代と対応した金融政策に対するレジーム変化モデルにより、好景気へのリターンの影響を明らかにした。
  • 金融危機化におけるREITのリスクは株式よりも高いことを示した。
  • 資金調達流動性REITの取引流動性と正の関係を有する。

 

終わりに

REIT研究については、株式・債券に比べるとまだまだ発展段階にあることは事実である。

 

しかし、REITができたことで様々な不動産に関するデータが公表され、それが研究なされることで不透明であると言われ続けてきた不動産市場の透明化に貢献したことは間違いない。

 

今後も、REIT研究者としてREIT研究を取り上げるとともに、自らも研究を進化させていきたい。

 

 

 

参考文献

・児島『米国におけるREIT(不動産投資信託)の最近の動向』(2015)