夏休みの読書2021 ~不動産ファンド編4選〜
夏休みや盆休みで比較的時間のあるこの時期に、不動産ファンド志望者の大学生や転職希望者、勤務する若手、REITビジネスに興味がある方向けにおすすめしたい本を4冊紹介していく。
クリードの奇跡
-前野雅弥、富山篤
宗吉敏彦という男を知っているだろうか。
日本を代表する不動産投資家の一人である。
不動産ファンド隆盛期に「クリード」という会社を築き上げ、 巨万の富を手にし、栄華を誇った。
しかし、リーマンショックで不動産が暴落し、隆盛を極めていた不動産ファンドは倒産が相次ぎ、クリードもそれを免れなかった...
宗吉は負債650億円を背負ったが、それで諦めなかった。成長著しい東南アジアに戦いの場を移し、再び成功を収めたのだ。
一連のストーリーは時に行きすぎだともとれるが、彼の先見の明、そしてビックマネーを動かす度胸は全国の不動産ファンドマンも見習うところがある。
私募ファンドの教科書
-初村美宏
REITの種類は主に2種類ある。 一つは皆様個人投資家が投資されている
公募REIT(J-REIT)である。
そしてもう一つが投資家が限定されている「私募REIT」 である。
本書では、とてもわかりやすく私募REITの目的・方法、
不動産評価の項目について書かれており、勉強になる本だ。
筆者は上場市場で売買されることがない私募REITは公募REITに比べて、換金しにくいというデメリットがあるものの今後の私募REITの拡大によって流動性の問題も解消され、日本経済の大きな牽引役になるとも指摘している。
REITビジネスを1から知る上でも非常に参考になる。
私募・公募に限らず、REITに興味のある方は に必見の書である。
なぜニセコだけが世界リゾートになったのか
日本における不動産投資の後進性、そして観光政策の失敗の原因を認識させられた一冊であった。
本書はニセコがなぜ日本で唯一の世界リゾートになったのか、 ファイナンス面からの視点で描かれている。最近発刊された本であるので、コロナの状況も書かれている。
実はニセコでは コロナが感染拡大している状況下でも不動産投資が加速していると いう。
それは以下の理由からである。
①外資系大手や公共事業の計画
②世界的な金融緩和
③海外富裕層とホテルコンドミニアムの存在
「パウダースノー」 というキラーコンテンツを筆頭に海外のホテルの建設ラッシュが始まり、海外投資家からの投資が投資を呼ぶ状態となった。
私は本書から、「客数より収益、消費より投資」 の新しい経済でマネーが集まる観光地に
なる重要性を感じた。
国内の投資と外資の投資の違いについてはその点にあるり日本全国の観光地がインバウンドに平伏し、一般向けの「ゆるキャラ」やB級グルメを売り出すことから富裕層の思考に合わせた対応まで幕の内弁当的な全方位政策をとる中、ニセコにおける外資の投資はスノーパウダーという絶対的なキラーコンテンツを最大限に生かし、「海外」「富裕層」「スキー」に絞った「選択と集中」を実践してきたのだ。
ニセコが実現した 投資対象としての観光地のシステムは、不動産証券化においても参考になる点が多い。
日本の不動産が外資から買い進められている現在の状況の中で、まさしく読むに値する一冊だと言えるだろう。
Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて
ー玉川陽介
不動産ファンドは大量の数値を扱うことも多く、Excelスキルは必須だ。
個人の不動産投資家に向けて書かれた本であるが、法人にも十分適用でき、不動産特有のExcelスキルを学ぶ上で、うってつけの一冊になっている。
NOI や不動産の利回り、償却に関してなど不動産独特の概念も学べ、かつExcelを用いて不動産分析の練習をする一石二鳥の本だ。
特に、不動産ファンド志望者や不動産ファンドで働く若手向けにおすすめの本である。