賃貸・分譲住宅の価格分析(タヌキ書評)
『賃貸・分譲の価格分析手法の価格分析の考え方と実際』
刈屋、小林、清水(2016)
本書では、 ヘドニックアプローチや市場ビンテージ分析など実証分析によって 賃貸・分譲住宅の価格分析について試みている。
経済実証分析の観点から賃貸・ 分譲住宅の価格形成のメカニズムが知れるため、 知的好奇心をそそられる方はぜひ一読いただきたい。
本書の中で不動産市場及びその商品は以下のような特徴があることを 示した。
・組織化されてない不動産市場と価格情報の偏在
・賃貸住宅の重複性と商品の非同質性と需給構造
・商品の非同質性と選好:賃貸住宅サービス商品の属性と価値
・価格の変化に対する供給の需要に対する遅効性
以上の特徴をモデルの中に組み入れながら、 賃貸住宅に関する理論を体系化し、実証分析を試みている。
テクニカルな数式などが本書では用いられているため、 興味のある方は参考にしていただきたい。
本書ではヘドニック法を用いて、賃貸・ 分譲に関わる価格分析が行われている。
※ヘドニック法は、財の価格は、 その財を構成する属性によって説明されるという考え方に基づく手 法をいう。これは、ある商品の価格を、 その商品の様々な属性価値に関する集合体とみなし、 回帰分析を利用して各々の属性価格を推定するものとなっている。
いくつかの実証分析についても行われているが、 その中で個別設備についての価格分析が興味深かった。
実際に、1年間のデータにより、 単身タイプ物件における価格の属性の関係を示すヘドニックモデル が定式化され、 物件の内部属性でいくら賃料が変化するのか計量分析がなされた。
結果は、
・洗面所が浴室とトイレから独立している場合は5,012円増加
・追い焚き機能が設置されていれば2,147円増加
・IHクッキングヒーターが設置されていれ1,580円増加。
※単身者用1Rを想定
上記の設備はあれば、 賃料が増加するのが何となく肌感覚で分かるが、 具体的にどれくらい上がるのかアカデミックな技量によって分析可 能になった。
他にも面白い研究が多く載っており、 統計学初学者でも分かりやすい内容になっているため、 ぜひ手にとって読んでみてください。